工程飛ばしとは?原因と対策を徹底解説|製造現場で再発防止する方法

製造現場では、日々多くの工程を積み重ねながら製品づくりが行われています。しかし、忙しさや慣れ、納期へのプレッシャーなどを背景に、本来実施すべき工程が省略されてしまう「工程飛ばし」が起こることがあります。
工程飛ばしは一見すると小さな省略に見えるかもしれませんが、品質不良や顧客クレームなど、重大なトラブルにつながるリスクをはらんでいます。
本記事では、工程飛ばしとは何かを整理したうえで、問題視される理由や発生原因、放置するリスクを解説します。さらに、工程飛ばしを防ぐための基本対策や再発防止の考え方、ITツールを活用した対策についても紹介します。
目次
工程飛ばしとは?
工程飛ばしとは、製品や製造作業の品質・安全を確保するために定められた工程の一部を、正規の手続きや合意なしに省略することを指します。工程には、加工や組立のような作業だけでなく、検査・測定・記録・承認・清掃・点検などの付随工程も含まれます。「多少であれば作業工程を省略しても問題ないのではないか」「今回だけは特別に、この程度の作業は省いても大丈夫だろう」といった軽い判断で起こりやすい一方、工程が抜け落ちることで不良の混入や事故発生のリスクが一気に高まります。
工程飛ばしの定義
工程飛ばしの定義は、決められた工程(ルール)に対して、実際の作業が一致していない状態が生まれることです。例えば、工程表や作業標準書で「A→B→C」と定められているのに、現場で「A→C」と進めてしまう。あるいは「測定して記録」「ダブルチェック」「責任者承認」といった工程が、未実施のまま完了扱いになる。これらはすべて工程飛ばしに該当します。
なお、工程飛ばしは必ずしも悪意があるわけではありません。現場では「段取りが遅れている」「ラインが詰まっている」「前工程が不安定」「人が足りない」などの事情が重なり、結果的に工程が省略されるケースも多いのが現実です。
製造現場における工程管理上の具体例
工程飛ばしは、特別なトラブルが起きたときだけに発生するものではありません。多くの場合、日常業務の中で「この工程はいつも問題がない」「少し工程を省いても影響は小さいだろう」といった判断が積み重なることで起こります。こうした省略は、個々の作業単位では見過ごされがちですが、本来は工程全体を順序立てて管理し、抜けや漏れがないかを確認する「工程管理」の視点で捉える必要があります。そのため、工程飛ばしは一つひとつの作業だけを見ていては気づきにくく、作業全体を工程として管理したときに初めて浮き彫りになる問題だといえます。
実際の製造現場では、工程飛ばしは次のような形で起こりやすくなります。
- 検査工程の省略 :抜取検査や外観検査を飛ばして次工程へ進める
- 測定・記録の未実施 :測定はしたつもりでも記録が残っていない、あるいは後でまとめて記入する
- 承認・サインの未取得:承認者不在で自己判断で進める、サイン欄が空欄のまま進める
- 清掃・点検の省略 :始業点検や治具点検を省いて稼働、異常の芽を見逃す
- 材料・部品の確認省略:ロット確認や品番照合を省略して組み立ててしまう
作業工程は、単体作業で捉えると短時間の些細な作業でも、積み重ねると品質・安全に直撃します。また工程管理の観点では、「工程が実施された証拠(記録)が残るか」が、非常に重要で、記録がない工程はやったことにならないと判断されやすくなります。
手順違反や作業省略との違い
工程飛ばしは、手順違反や作業省略と混同されがちですが、違いを整理すると判断しやすくなります。- 手順違反:決められた手順(方法)を守らない(例:締付トルクの指定を無視)
- 作業省略:作業の一部を抜く(例:ネジ1本を締め忘れる)
- 工程飛ばし:工程そのものが抜け落ちる(例:検査工程・承認工程・記録工程が丸ごと未実施)
工程飛ばしは、工程単位で抜けるため、影響範囲が広く、再発もしやすいのが特徴です。個人のミスというより、仕組みや運用の課題として扱う必要があります。
工程飛ばしが問題視される理由
工程飛ばしは「現場の効率化」のように見えて、実際には品質・安全・信頼を損なう大きな要因になります。工程飛ばしが常態化すると、現場は「問題が起きない限り省略してよい」という空気に傾き、改善が難しくなります。
品質不良の発生
工程飛ばしが品質に与える影響は重大です。検査や確認が抜ければ、不良が次工程へ流れ、最終的に顧客へ届く可能性が上がるからです。さらに厄介なのが、工程飛ばしによる不良は「いつものミス」と違って、発生条件が一定ではないことです。たまたま問題が出ない日が続くと、「やっぱり飛ばしても大丈夫」という誤った学習が起こり、工程飛ばしが定着しやすくなります。
安全事故や労災リスク
安全確認や設備点検、保護具着用確認などの工程が省略されると、事故発生の確率が上がります。例えば「今日は忙しいから点検を後にしよう」という判断が、治具の摩耗やガードの不備、異常音の見逃しにつながり、結果として労災事故を招くケースがあります。
工程飛ばしは、品質だけでなく「人の安全」にも直結するため、企業としては早期に対処しなければならない重要テーマです。
顧客クレームへの影響
顧客クレームは、単に不良を解消すれば終わりではありません。- 調査報告(原因調査・再発防止)
- 追加検査や選別
- 代替品の手配・提供の対応
- 取引条件の見直し
など、波及が大きいのが一般的です。
工程飛ばしは、品質だけでなく「人の安全」にも直結するため、企業としては早期に対処しなければならない重要テーマです。
工程飛ばしが原因だと判明した場合、「工程が守られていない」「管理が機能していない」と見なされ、信頼失墜につながりやすくなります。
品質マネジメント、工程管理上の問題点
品質マネジメントや工程管理では、定められた標準を守り、その結果を記録し、改善につなげていく流れが基本です。しかし工程飛ばしが常態化した現場では、この基本的な流れが機能しなくなっていきます。具体的には、次のような状態が生じやすくなります。
- 標準が守られない(形だけのルールになる)
- 記録が残らない(原因究明ができない)
- 改善が回らない(再発防止が機能しない)
つまり工程飛ばしは、マネジメントシステム全体を揺るがす問題として捉える必要があります。
工程飛ばしが起こる主な原因
工程飛ばしが発生する理由を「現場の意識が低いから」と片付けると、ほぼ確実に再発します。多くの場合、複数の原因が重なっています。ここでは代表的な原因を整理します。
作業者個人の判断や慣れによる工程変更
ベテランほど「この工程は意味が薄い」「不良が出たことがない」と感じることがあります。また、ラインの遅れを取り戻す目的で、良かれと思って省略してしまうこともあります。
このタイプの工程飛ばしは、当人に悪意がない一方で、周囲が止めにくいのが特徴です。「あの人がやっているなら大丈夫」という空気が生まれると、横展開してしまいます。
工程管理ルールや手順書が現場の実態に合っていない
手順書が現場の実態とズレていると、守られなくなります。現場では、次のような状態が見られることがあります。- 1人作業が前提なのに、実際は複数人で回している
- 設備や治具が変わったのに手順が更新されていない
- 記録項目が多すぎて、現場が回らない
こうした状態だと、工程飛ばしというより「守れない標準」が生まれ、現場は独自運用に流れます。結果的に工程が抜ける確率が高まります。
人手不足と納期へのプレッシャー
現場で最も多い原因がこれです。人が足りない・納期が厳しい・設備トラブルが続くなどの問題が常態化している状況では、工程の短縮が誘惑になります。
ただし短縮した分は、後で手直しやクレーム対応として返ってくることが多く、長期的には負担が増えます。だからこそ、個人を責めるのではなく、工程飛ばしが起きにくい設計(運用)が必要です。
引き継ぎ不足
交代勤務や応援要員の増加、新人の投入などがあると、引き継ぎ不足から工程が抜けやすくなります。「どこまで終わったか」「どこが要注意か」が不明確だと、確認工程や記録工程が抜け落ちます。
引き継ぎの課題は、人の問題に見えて、実は“情報の置き場・共有方法”の問題であることが多いです。
作業工程のチェック体制の不備
チェックする人がいない、チェックが形式だけ、チェックしても記録が残らないなど、こうした状態では、工程飛ばしは発見されません。発見されないものは改善されないため、工程飛ばしが常態化しやすくなります。
チェック体制は「誰が」「いつ」「何を」「どうやって」確認するかを、工程に組み込む必要があります。
工程飛ばしを放置するリスク
工程飛ばしを見逃すと、短期的には、現場が健全に回っているように見えても、中長期で大きな損失になります。ここでは代表的なリスクを整理します。
対象となる取引と取引内容
工程飛ばしによる不良は、後工程で発見されやすく、手直し範囲が広がりがちです。さらに、後工程に流れた不良は、工程内で混在してしまうため、選別や再検査が必要になり、コストが膨らみます。
「工程を飛ばして浮いた数分」より、「手直しで失う数時間〜数日」のほうが圧倒的に大きい、というのは現場でよくある話です。
トレーサビリティの欠如
工程記録が残っていないと、問題発生時に原因を特定できません。次のような作業工程の記録が追えない状態は、再発防止の設計ができない状態です。
- いつ、どのロットで
- 誰が、どの工程を
- どんな条件で実施したか
トレーサビリティが弱いと、顧客への説明も難しくなり、信頼への影響が大きくなります。
重大事故につながるケース
工程飛ばしは単発で終わることもありますが、怖いのはその積み重ねです。点検の省略が続く・確認が甘くなる・記録が適当になることが常態化した末に安全・品質の防波堤が薄くなったとき、重大事故が起きやすくなります。
組織文化への悪影響
工程飛ばしが黙認されると、「ルールは守らなくていい」「バレなければいい」という文化に傾きます。この状態になると、是正が難しくなり、真面目に守る人ほど損をする構造が生まれます。結果として、品質意識が全体で低下していきます。
工程飛ばしを防ぐための基本対策
工程飛ばしを防ぐには、精神論だけではなく、現場が作業手順を守れる形に仕組みを整えることが大切です。ここでは取り組みやすく効果の出やすい基本対策を紹介します。
作業手順書の見直しと標準化
まずは、作業手順書が現場の実態に合っているかを点検することが重要です。守られていない手順がある場合、単に「守れ」と指示するのではなく、なぜ守られていないのか、その背景を確認する必要があります。工程飛ばしの多くは、手順の過剰さや現場とのズレが原因となっているためです。
手順書を見直す際には、次のようなポイントを意識すると効果的です。
- 重要工程(品質・安全に直結)を明確化する
- 必須工程と任意工程を区別する
- 変更があったら即更新し、古い版を残さない
作業工程のチェックリストの導入
チェックリストはシンプルですが効果的です。工程の抜け漏れを防ぐだけでなく、作業者自身が「どこが重要か」を意識できるためです。ただし、項目が多すぎると形骸化します。絶対に飛ばしてはいけない工程を中心に、チェックが現場で回る設計にするのがコツです。
工程ごとの可視化(表示・サイン・IT活用)
工程飛ばしは「見えない」から起きます。そこで、工程ごとの完了状態を見えるようにします。
- 工程ごとに完了サインを出す
- 進捗ボードで工程の停滞を見える化する
- 記録や承認が未完了のものは次へ進めない仕組みにする
こうした可視化は、工程飛ばしをやりにくくする強い効果があります。
工程管理ルールを浸透させる教育の徹底
教育は「守れ」ではなく、「なぜこの工程が必要か」を共有することが重要です。工程飛ばしが起きやすい背景には、裏を返せば「意味が伝わっていない」「負担に見合う価値が理解されていない」可能性があります。
特に、品質・安全に直結する工程は、事例(不良や事故の発生例)を交えて伝えると浸透しやすくなります。
再発防止のための仕組みづくり
工程飛ばしは、発覚したら終わりではなく、再発防止までセットで取り組む必要があります。ポイントは「個人の注意」ではなく、「工程として再発しにくい仕組み」を作ることです。
再発防止のための仕組みづくり
工程飛ばしが起きた場合は、次の流れで整理すると再発防止につながります。
- どの工程が飛ばされたか(工程の特定)
- どの条件で起きたか(時間帯、人員、設備、品種など)
- なぜ飛ばせてしまったか(仕組み・チェック・記録の穴)
- どうすれば“飛ばせない”状態にできるか(対策案)
ここで重要なのは、再発防止=工程設計の改善という視点です。工程飛ばしは、「工程飛ばしをした人」ではなく、「工程飛ばしを発生させた仕組み」に目を向けるほうが、再発が減ります。
ツールの活用
紙や口頭による管理が中心の場合、日常業務を回すことはできても、工程の状況を正確に把握し続けるのは難しくなります。その結果、現場では次のような課題が生じやすくなります。
- 情報が散らばる
- 引き継ぎが曖昧になる
- 記録が後追いになる
このような状態では、工程の抜け漏れや確認不足が見えにくくなり、工程飛ばしが起こりやすくなります。ツールを活用することで、工程の進捗や確認状況、対応履歴を一元的に管理でき、工程飛ばしの温床となりやすい「曖昧さ」を減らすことが可能です。特に複数ラインや複数拠点を持つ現場では、ツール導入による効果がより大きくなります。
現場改善(カイゼン)との連携
工程飛ばし対策は、カイゼンと相性が良いテーマです。工程飛ばしが起きやすい工程は、現場の負担が高い、ムダがある、確認がしにくいなど、改善余地があることが多いからです。
「工程を増やす」のではなく、工程の価値を保ちながら、守りやすい形にする。この視点で改善活動と連動させると、現場に定着しやすくなります。
「CommuRing」を活用した工程飛ばしへの対応策
工程飛ばしの背景には、情報共有の不足や、工程の状況が見えないこと、記録が残らないことが関係しているケースが多くあります。そこで有効なのが、現場のコミュニケーションと工程の見える化を支えるツール活用です。
「CommuRing(コミュリング)」は、現場のやりとりや確認事項・周知内容を整理し、必要な情報が必要な人に届く状態を作ることで、工程飛ばしの発生を抑止できます。
例えば、次のような運用が可能です。
- 工程ごとの注意点やルール変更を、現場に確実に周知する
- 引き継ぎ事項を一元管理し、交代時の抜け漏れを減らす
- チェックや確認の履歴を残し、後から追える状態にする
- 問題が起きたときの対応経緯を共有し、再発防止に活かす
ポイントは、ツール導入そのものではなく、「工程が飛ばされにくい運用」に落とし込むことです。現場が無理なく回る形で定着できると、工程飛ばしは減らしやすくなります。
まとめ
工程飛ばしは、忙しさや慣れ、納期へのプレッシャーなどをきっかけに、どの現場でも起こり得る問題です。しかし、工程が抜け落ちることで品質不良や安全事故、顧客クレームにつながり、手直しコストや信頼低下などの大きな損失を招く可能性があります。
工程飛ばしを減らすには、手順書やチェック体制、状況の可視化、教育といった基本対策を整えたうえで、再発防止の仕組みとして定着させることが重要です。紙や口頭に頼った管理に限界を感じる場合は、ツールも活用しながら、工程の状況を見える化し、情報共有と記録を強化していきましょう。
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